次々に列島に来襲する台風の余波で、軽井沢もすっきりとした空を仰ぐことが無いまま短い夏を終えようとしています。
8月最後の木曜となる本日は、毎年この町に思いを寄せてくださる上皇様ご夫妻お見送りの警備の列が幹線道路に続いていました。軽井沢図書館では蔵書整理が行われ、友の会からは7名がお手伝いに参加しました。
蔵書整理は、1ヶ月間の貸し出しや閲覧により元の書架に帰れなかった本たちを探し出して、本来の場所に戻してあげる作業です。背表紙の細かいラベルの文字を頼りに順序よく、しかも背表紙の凸凹や斜めになる本が無いように美しく整えます。
そんな作業の中での楽しみは、この膨大な本の森の中で今まで手に取ったことが無い興味深い本に、整理の途中で出会えることです。
今日も友の会会員二人に、出会った本を紹介してもらいました。
画家でもあり、余暇には山登りもするというT村さんは、ニコニコ顔で『三省堂日本山名事典』を選び出してくれました。標高5mの天保山から霊峰富士まで2万5千余の日本の山について、標高、所在地から山名の由来までさまざまな基本情報を収めたこの事典は、山岳県長野に住む者として持っていたら楽しいだろうなと思える一冊です。身近な荒船山の項を思わず皆で覗き込んだりしました。
夏の間を軽井沢で過ごしながら熱心にボランティア活動に協力してくれるI佐さんは、小説の棚を担当して、141回芥川賞の『終の住処』(磯崎憲一郎)を選んでくれました。
移住者の多い軽井沢に住んでいると、終の住処をどこに定めるかというテーマは日常に寄り添っています。しかし「人生とは、流れていく時間そのものなのだ」という帯の言葉を読むと、どうもそういう現実的な居住の問題では無さそうな気がします。多くの小説やエッセイで何度も取り上げられ、もはやこなれ過ぎた感のある”ついのすみか”というワードを掲げたこの本が、2009年芥川賞に輝いた意味はなんだったのでしょうか?
迷走する台風10号が近づいてきます。森のリスたちも今年のあまりの雨の多さに、被毛の乾く暇がありません。
軽井沢は比較的台風災害の少ないところですが、被害の大きい地域のニュースに胸が痛みます。皆さんくれぐれもお気をつけてお過ごしください。